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品質と生産量向上の両立をついに実現させた、ミニトマト栽培の新技術

【研究名】植物環境制御学

2018年02月20日

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高糖度で高収量を実現したサンゴ砂礫農法のメリットと実績

ミニトマトの栽培といえば小学校の教材としても馴染み深く、初心者でも比較的育てやすい印象です。しかし、近年人気の高糖度ミニトマトの栽培では、通常の栽培よりも土壌条件に制限があることに加え、水分・養分の管理が難しく、高収量を確保するのはどの品種を使っても難しいとされています。さらにトマト自体が連作障害の発生しやすい野菜であるため、土の入れ替えや土壌消毒等の対策にもコストが高く、安定生産には高い技術が必要とされてきました。

そんなミニトマト栽培の常識を覆すのが、明治大学農学部・中林和重准教授の発明した「サンゴ砂礫(されき)農法」。化石化した天然のサンゴ砂と、苦土石灰、ケイ砂を培地とした栽培方法で、特長としては以下が挙げられます。

1)土壌を用いないため、土壌病原菌、害虫などによる連作障害の発生率が大幅に減少される
2)サンゴ砂とケイ砂の混合割合によって含水率を容易に管理できるため、収量・味を調整しやすい
3)培地からカルシウム、マグネシウム等が溶出するため、ミニトマトの生育に必要な養分が補完される
4)培地を洗浄すれば長期間の継続利用が可能(15年以上の耐久性を確認している)

このように土壌づくりや栄養管理の負荷を大幅に軽減し、高糖度と高収量の両方を叶える革新的な農法なのです。実はサンゴ砂を用いた栽培では既に25年間の栽培実績があり、性能を上げるためにマグネシウムなどを含んだ砂礫を混合した「サンゴ砂礫農法」については数年前からは国や企業、地域と協働で大規模栽培を実施しています。

福島県新地町、茨城県常総市における実施事例

東日本大震災で甚大な被害を受けた、福島県新地町。明治大学は2012年1月に新地町と震災復興に関する協定を結び、この土地で、サンゴ砂礫農法による高糖度ミニトマト栽培の実証事業を行っています。参画しているのは明治大学のほか、農業法人の新地アグリグリーン、大手建設会社の清水建設、流通大手のヨークベニマル。企業3社の産学連携プロジェクトとして、27aの栽培ハウスでこの農法を導入してミニトマトの栽培を実施しています。10aあたり10tの収量を上げながら、高糖度の目安となる糖度9度以上を平均的に確保する実績となりました。また、2015年の関東・東北豪雨災害に見舞われた茨城県常総市では、土耕栽培ハウスでの栽培を実施。濁流で泥をかぶった土での栽培と比較して収量は5割多く、糖度も土耕の6.7に対して8.0の高さを記録しました。

サンゴ砂礫農法を用いた大規模栽培(福島県相馬郡新地町)

土耕栽培ハウスの様子(茨城県常総市)

ミニトマトの収量を5割増加させた、電気と光の栽培テクノロジー

ミニトマトに限らず作物の栽培には、培地の整備だけでなく栄養管理が不可欠。生育過程における栄養診断の一般的な方法は肉眼観察によるもので、作物の外面に現れたさまざまな症候を、農家の熟練者が経験に基づいて判定します。しかし、熟練者の高齢化や減少のために口伝が難しくなるとともに、若手農業者の育成にも多大な時間を費やすのが難点。もうひとつ、植物体の養分を化学分析する方法もありますが、装置と技術が必要となり簡易ではないうえに、評価の基準値が十分に明らかにされていないのが現状です。

そこで中林准教授は、生体電位検知による栄養診断技術を開発しました。植物が出す微弱な電気に含まれる特定周波数の出現と、栄養欠乏の相関関係に基づき、植物の栄養状態を診断するこの診断法。トマト、レタス、ルッコラでは既に実験によって、電位と栄養の関係性が明らかにされています。さらに、貧栄養状態の植物には、20Hzの赤色点滅光を照射することで、栄養状態が改善され生育が促進されることもわかってきました。
中林准教授らはこれらの栽培技術を組み合わせ、電位検知と点滅光照射を自動で行う装置を開発。一定の生体電位を検知すると自動で20Hzの赤色点滅光を照射するものです。これを用いて実際に、明治大学植物工場の人工気象室にて、ミニトマトの水耕栽培を行いました。その結果、電位検知・点滅光照射を行ったミニトマトは、それを行わなかったものよりも収量が5割増加。肥料成分に乏しい栽培環境でも、この技術によって生育が改善し、収量も増大することが明らかになりました。この成果は、2014年6月に日本生態工学会の学術賞を受賞。実用化されれば、農地への肥料施用量の削減、さらには肥料過多による環境汚染の予防も期待できます。

生体電位検知・点滅照射法を用いたミニトマト栽培では通常より収量が5割増加

高糖度・高収量を実現し、被災地に貢献した「サンゴ砂礫農法」。今後の農業にイノベーションを起こす可能性を秘めた「生体電位検知・点滅光照射法」。これらのテクノロジーは企業や自治体と協働することでさらに大きく成長し、これからの農業、そして持続可能な社会を支える技術となるでしょう。

中林 和重Kazushige Nakabayashi
明治大学 農学部農芸化学科 准教授
植物栄養学・土壌学
https://www.meiji.ac.jp/agri/daigakuin/teacher/01/6t5h7p000001ds47.html

 課題に適した研究のご紹介だけでなく、ご要望に合わせた技術活用の提案も行っております。具体的には決まっていない段階でも、まずはご相談ください。その他、知的財産の管理・活用、産学官連携に関連するお問い合わせも承ります。ぜひお気軽に、お問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。

 

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Seadasがこの研究を通して実現したいSDGsの目標

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略。全17カテゴリで定められた目標のうち、この研究によっても貢献が期待されています。
クリーク・アンド・リバー社は、持続可能な「未来の社会」のためにオープンイノベーションを加速させ、SDGsに寄与していきます。

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