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「自己組織化」が創り出す繊細で美しいパターンの応用可能性

【研究名】自己組織化現象

2018年03月09日

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生き物が獲得してきた効率化のメカニズムの解明

体力温存のために隊列を組んで飛ぶ渡り鳥や、自己防衛のために群泳する小魚。実はこれらの行動は、特定のリーダーの指示によるものではありません。個々が何らかの単純なルールに基づいて行動することで、群れの中に自然に秩序が生まれるこの現象は、「自己組織化」と呼ばれます。明治大学総合数理学部の末松先生はこれについて、生物の持つ機能と、効率化のメカニズムに着目して研究を行っています。物理化学の立場から、生物の行動原理やそのメリットを明らかにし、無生物に応用することを目指しています。これが実現すれば、エネルギー効率の飛躍的な向上に寄与する可能性があります。

自然界の効率化システムを応用し、サステナブルな社会へ

末松先生がこの研究で目指すのは、生物の機能を数理モデル化すること。まずは細胞の機能を明らかにするため、単細胞生物のミドリムシを研究対象として扱っています。ミドリムシには、強い光から逃げ、光合成に適度な明るさのところに移動する習性があります。この習性によって、ミドリムシの集団が斑点模様を描く様子を観察したのが、生物対流パターンの実験。ミドリムシの培養液に下から強い光を当てると、強い光を避けてミドリムシは液の上に移動します。そして、重力に耐えられず沈んでいくとき、流体の効果で周りを引き込みながら移動します。それを繰り返すうちに、自然に密集部分とそうでない部分が等間隔に生じ、斑点模様があらわれるのです。これが、「生物対流」という自己組織化現象。模様のパターンは既に数理モデル化されていて、条件を変化させることで、斑点模様を直線にするといったコントロールが可能です。現在取り組んでいるテーマは、斑点模様の形成が及ぼす、一個体におけるミドリムシの生体反応への影響。ミドリムシの自己組織化現象が、彼らの光合成の効率を高める要因につながっていることがわかれば、そこから効率的な光合成の構造を得ることも期待できます。

実はこれに似た動きは、無生物でも発生します。たとえば、あたたかいお味噌汁。しばらく置いておくと、味噌の粒が模様を作ります。これは、表面の液体が冷めて重くなることで沈み、反対に下からあたたかくて軽い液体が上昇することで生まれる「熱対流」という現象。上昇部分と下降部分が規則的に並び、そこに味噌の粒が集まることでハチの巣のような模様がつくられるのです。熱対流が発生することで効率的に熱を排出できることがわかってきていて、これまでのエネルギー効率の考え方に新たな視点をもたらしました。

生物対流によって斑点模様を描くミドリムシ

熱対流によってハチの巣のような模様が見られる味噌汁

 

自然界の持つ複雑な効率化システムを数理モデル化することができれば、効率的な生産プログラムとして製造業やエネルギー開発に大いに貢献するでしょう。サステナビリティを考えるいま、クリーンエネルギーの開発は世界共通の課題。自然界が培ってきた数億年の知恵が、エネルギー開発や製造業の分野と連携することができたなら、持続可能な社会に向けたイノベーションは加速するはずです。

自然の神秘が生み出す新たなデザインの可能性

エネルギー効率化の観点で研究されてきた「自己組織化現象」ですが、模様の幾何学的な美しさから、デザインの分野での応用が期待されています。たとえば、日本の伝統技法「墨流し」は、染料を水に浮かべ、細い竹で水面を動かして模様を描き、紙などに写し取るもの。そこにこの現象を組み合わせることで、染料の中で生物や化学反応に模様を描かせたり、あるいは染料自体を自己組織化させて模様を発生させたりといった、人の力を加えない表現が可能になるかもしれません。これはつまり、「人の持つ創造力」の限界さえも超越するポテンシャルを秘めているということ。条件を変化させれば発生するパターンのコントロールも可能なので、応用先はアイデア次第。今後ファッションやインテリア、広告、アートといった幅広い分野で、自然の神秘が繰り広げる繊細で美しい世界が展開されていくでしょう。

末松 J. 信彦Suematsu J. Nobuhiko
明治大学 総合数理学部 現象数理学科 専任准教授
物理化学、界面化学、非線形科学、自己組織化現象
http://www.isc.meiji.ac.jp/~suematsu/index.html

課題に適した研究のご紹介だけでなく、ご要望に合わせた技術活用の提案も行っております。具体的には決まっていない段階でも、まずはご相談ください。その他、知的財産の管理・活用、産学官連携に関連するお問い合わせも承ります。ぜひお気軽に、お問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。

 

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Seadasがこの研究を通して実現したいSDGsの目標

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略。全17カテゴリで定められた目標のうち、この研究によっても貢献が期待されています。
クリーク・アンド・リバー社は、持続可能な「未来の社会」のためにオープンイノベーションを加速させ、SDGsに寄与していきます。

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