• INTRODUCTION

目の錯覚から巧みなアートを生み出した数学の力

【研究名】計算錯視学

2017年11月10日

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

錯視とは、いわゆる「目の錯覚」のこと。形・大きさ・長さ・色・方向などが、ある条件や要因のために実際とは違ったものとして知覚されることです。鉛筆を上下に揺らすとグニャグニャに曲がって見える「ラバーペンシル錯視」などは、子どもの頃に一度は試したことがあるのではないでしょうか。
また、私たちの日常の中にも、錯視効果が利用されています。例えば、道路標識や横断歩道。立体的に見えるよう計算された図を路面に描くことで、運転手の注意喚起や減速を促しています。他にも、細身に見せるファッションや、消費者の注意を引くトリック広告など、さまざまな形で活用されています。
明治大学・杉原厚吉先生のグループが研究しているのは、「フットステップ錯視」。これは、縞模様の前をある形が等速運動しているとき、それが別の動きに見える錯視のことです。視覚効果を計算し、数学的分析から生みだされた図形のパターンは、等速運動をしているとは思えないユニークな錯視を引き起こします。

縞模様に重なるとき、違った動きに見える「フットステップ錯視」

なめらかに動く時計の秒針が、ストライプの上を通過するときだけカチコチと動いているように見えたのではないでしょうか。これが「フットステップ錯視」です。このような現象について杉原グループは、錯視効果が最大となる条件や、錯視が起きるタイミングや種類とオブジェクトの幅・ストライプの幅との関係、「錯視アート」としての応用例の考案などといった研究を行っています。

この錯視が起こる原因として考えられているのは、動くオブジェクトと背景のストライプの色のコントラスト。上の動画の例では、黒に黒、白に白が重なったとき、人間にとっては動きを認識しにくくなります。つまりフットステップ錯視は、「オブジェクトの両端とストライプとのコントラストが低いとき」に止まっていると認識し、「コントラストが高いとき」に動いていると認識することから起こるのです。

緻密な計算から生まれた「錯視アート」のこれから

杉原グループはこの視覚現象について、図形の幅や形状の計算・分析といった数学的観点からアプローチ。「フットステップ錯視」に加え、オブジェクトが尺取虫のように伸び縮みして見える「インチワーム錯視」についても、効果を最大化させる条件を明らかにしました。さらに、1)オブジェクトの幅、2)生み出す錯視の種類、3)錯視効果の起こるタイミングの3つの組み合わせを分析し、縞模様の「幅」と「距離」の関係を8つのパターンに分類しました。
このように緻密な計算に基づいた理論から生み出したのが「錯視アート」です。平行移動するオブジェクトが、ユニークに変形しているように見える動きを設計しました。

ゆらゆらと海を泳ぎ、ペタペタと陸を歩くカメ

フットステップ錯視アート 「海と陸(ワイド)」

前半部分では、カメが泳いでいるように見え、後半では陸を歩いているように見えます。同じ形のものが動いていますが、背景を変えることで動き方の変化を作り出しました。

満月の夜にパタパタと羽ばたくこうもり

フットステップ錯視アート 「満月のこうもり(カラー)」

斜めに平行移動しているだけなのに、背景が格子の部分ではまるで羽ばたいているように見えます。背景が満月の部分になると、本当に同じ形のものが平行移動しているだけだとわかるでしょう。

上の動画ではオブジェクトが動く場合でしたが、オブジェクトを固定して、ストライプまたは視点を動かすことによっても錯視を起こすことができます。これを応用して、例えば車や電車、エスカレーターなどから見える位置に錯視アートを使った屋外広告を設置すれば、通る人々の注目を集めるでしょう。電光掲示板と違って電気を使用せず、低コストで注意を引くことができます。もちろん広告や掲示だけでなく、アイデア次第でさまざまな使い道が生まれるでしょう。商用展開や公共スペースへの設置など、今後幅広い応用が期待されます。

杉原 厚吉Kokichi Sugihara
明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授
幾何数理工学、計算幾何学、計算錯覚学
http://home.mims.meiji.ac.jp/~sugihara/

共同研究者

友枝 明保 武蔵野大学工学部数理工学科
准教授
小野 隼 元明治大学杉原研究室
大学院生

課題に適した研究のご紹介だけでなく、ご要望に合わせた技術活用の提案も行っております。具体的には決まっていない段階でも、まずはご相談ください。その他、知的財産の管理・活用、産学官連携に関連するお問い合わせも承ります。ぜひお気軽に、お問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。

 

お問い合わせはこちら

Seadasがこの研究を通して実現したいSDGsの目標

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略。全17カテゴリで定められた目標のうち、この研究によっても貢献が期待されています。
クリーク・アンド・リバー社は、持続可能な「未来の社会」のためにオープンイノベーションを加速させ、SDGsに寄与していきます。

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
お問い
合わせ